不動産、投資、相続、ライフスタイル別に必要なこととは?

子育て時期に差し掛かる30代夫婦のケース
教育資金を確保しながら持ち家を購入したい

~教育資金づくりは、住宅ローン返済とは別の口座で~

 

幼い子どもを持つ家族にとって、「住まい」は大きなテーマです。

 

賃貸住宅に住む30代夫婦が住宅の購入を検討していると想定します。

 

今後10年以上にわたり教育資金が必要になる家計状況で、どのような点に注意すべきでしょうか。

 

金利水準が低いいま、住宅購入にあたっては諸経費分を含めたフルローンを金融機関から提示されることが多いです。

 

だからこそ、安易に考えず、手堅い生活資金設計が大切になります。

 

就労形態が多様化する中で、収入のブレが想定される夫婦も多いため、住宅取得資金に占めるローン比率が高い方ほど、変動金利ではなくフラット35などの固定金利が有利な場合があります。

 

子どもの大学進学について、自宅から通うのか遠隔地なのかといったプランによっても予算は変わりますし、共働きであるかどうかも影響します。

 

何にどれだけお金をかけたいのか、人生で優先したいもので持ち家の選択肢も変わります。

 

教育資金は、住宅ローンの返済とは別の口座で貯めていくことが前提です。

 

特に大学進学のための資金は、決まった時期に決まった目的に使うお金であるため、過度なリスクを取る運用は避けるべきです。

 

ただ、学資保険や子ども保険では収益が期待できない現状で、10年以上の運用期間があれば、運用資金のうち月々1万〜2万円程度はつみたてNISAを通じて、投資信託で積み立ててもよいと思います。

 

教育資金確保を優先し、無理のない住宅購入を検討
 

2017年の首都圏での新築マンションの1戸当たりの平均価格は5,908万円と、バブル期以来の高値水準であり、平均的な世帯年収にとって手が届く物件は少なくなっています。

 

まずは教育と住宅、どちらを優先したいのかを念頭に起きましょう。

 

教育を優先したいのなら、教育資金の確保を優先的に行い、そのうえで無理のない住宅購入を検討するのがいいでしょう。

 

そこで、家計が圧迫されるようなら、中古マンションや一戸建ても候補に挙がります。

 

最近は、中古マンションの内装を撤去しコンクリートの壁と天井のみのスケルトン状態にしてから、自分好みの仕様にリノベーションするケースも増えつつあります。

 

家族の好みや価値観を反映できるのはリノベーションのメリットですが、汎用的な間取りや仕様と異なれば中古住宅市場ではあまり評価されず、コストをかけた割には住宅の資産価値に反映されない点にはあらかじめ理解が必要です。


 

もし、こだわりのあるリフォームやリノベーションをするのなら、自分たち家族が長い間、住み続けることを前提にすべきでしょう。

 

中古住宅の中でも、1981年5月31日以前の旧耐震基準が適用された建物は、将来の耐震性に不安がのこります。

 

自然災害への備えも加味したかたちで、適正な住宅や価格なのかを評価するようにしなければなりません。

 

ポイントまとめ
●収入のブレが想定される場合は、固定金利タイプが安心

●教育資金は、住宅ローン返済とは別口座で管理を

●個性的なリノベーションは、長く住むことを前提に

●中古物件を選ぶ際は、耐震基準のチェック

 

 



 

金融資産が豊富な40代男性のケース
余裕資金で不動産投資を検討したい

分散投資は理想ですが長期にわたるローン負担の想定を~

 

有価証券以外の運用先として、不動産も実物資産として選択肢になります。

 

個人向けの投資用不動産としては、ワンルームマンションやアパートが主な対象でしたが、エリアや内容によっては価格の幅は広いです。

 

ここでは、年収1,000万円ほどの40代の男性会社員が、初めて実物不動産投資に取り組むケースを想定します。

 

実物不動産であっても分散投資が基本だと考えるべきです。

 

同じコンパクトマンションであっても、一戸だけは空室リスクがあります。

 

エリアや間取りなどが異なる複数の物件を所有すれば、それだけ空室リスクを下げられます。

 

例えば、2,000万円の自己資金があったとしても、自己資金だけで一戸2,000万円の物件を購入するのではなく、頭金500万円、ローン1,500万円の組み合わせで、一戸2,000万円の物件を四戸所有するといったプランです。

 

もちろん今後の収入見通しなどから、いくらのローンであれば、無理なく返済できのかを策定することがスタート地点になります。

 

家賃収入による実質利回りも、ローンの返済に応じて、低い期間が続きます。

 

物件価格2,300万円の新築ワンルームマンションを2,000万円のローンを組んで購入したとします。

 

金利2%の30年ローンなら月々の返済はおよそ7.4万円です。

 

管理費、修繕積立金、固定資産税等のランニングコストも考慮する必要があり、当初の家賃が8万円だとすれば収支はマイナスになってしまいます。

 

減価償却費やローンに対する所得税の節税効果をメリットと捉える人にとって、これでも良いかも知れません。

 

ですが、キャッシュフローがマイナスになることは避けましょう。

 

加えて、段階的に家賃が下がることを想定すると投下資本の回収には20〜30年の期間を要し、それ以前の売却ではトータルリターンはマイナスになる可能性があります。

 

10年で売却を考えるなら、この投資はノーです。

 

20〜30年後にローンを完済して以降、手取りベースで月額4万円程度の家賃収入を得ながら、資産として物件を保有したいというニーズがあれば合致します。

 
不動産を見る目があるプロと組んで一緒に提案
 

中古物件をキャッシュで複数買うという選択もあります。

 

例えば、2,000万円の自己資金で2物件購入するといったプランで、15年程度で投下資本を回収できる見込みの物件を探すことです。

 

だだし、築年数がかなり経過している中古物件は多面的によく調査して評価する必要があります。

 

街のブランド力や交通利便性など、立地の良さ、他エリアと比べた人口動態や賃貸物件の多寡は新築同様に重要な要素です。

 

さらに中古物件は、同様の築年での賃料の相場や管理状態などから今後の家賃の見込みを精査するべきです。

 
 

ポイントまとめ
●実物不動産投資も基本は分散

●ローンを組むなら投下資本の回収には新築で20〜30年程度の期間を想定

●実質利回りを基にプラン策定、出口戦略を提案

●信頼できる不動産のプロとの協働も有効

 



 
すでに子どもが独立した50代夫婦のケース
相続した不動産を有効活用したい

~有効活用が難しければ、早めの売却も検討~

 

自宅を持ちながらも、相続によって別途、住宅用不動産を所有することになった50代の夫婦を想定します。

 

子どもは独立して生計を別にしており、すぐには近親者が利用する予定はありません。

 

固定資産税の負担もあるため、何らかの有効活用を検討したいといった状態です。

 

中古住宅が市場に多く存在しているいま、特に郊外であれば収益を期待できる物件は少数です。

 

そのうえで、収益面での有効活用が難しいと判断するのであれば、早めに売却したほうがよいでしょう。

 

全国の住宅の約7戸に1戸は空き家という問題を政府も深刻に受け止め、売却した際の譲渡所得から3,000万円を差し引ける特別控除や、解体やリフォームを促す施策を打ち出しています。

 

なお、特別控除が適用されるには、相続のときから譲渡のときまで事業や貸付、居住の用に供されていないことが等が条件になります。


 

住まいは1年空き家になるだけで、劣化が進むうえ、エリアによっては値下がりし続ける可能性があるため、判断を先送りすることも1つのリスクとなります。

 

シェアハウスや民泊での活用も慎重に
 

アパートへの建て替えなど、本気で有効に活用したいのであれば、それなりに戦略を立てた運用が前提になります。

 

世間ではシェアハウスが話題ですが、数年前と比べれば対象物件は増え、設備や内装、エクステリアなど他と違う魅力を強く打ち出さないと入居者そのものが集まりません。

 

新法で注目される民泊も近隣の理解を得ることが大前提で自宅もしくは隣接した場所での運営でないと、トラブルを引き起こしがちです。

 

民泊大手の米Airbnbも、ホストとゲストが対面するおもてなしをシステムに組み込んでいます。

 

法的には家主不在型の民泊は認められているが、資産運用となるコンセプトから乖離してしまうため、慎重さが必要です。

 

資産運用ではなく、自分たちのセカンドハウスや老後の住まいとして有効活用するという考え方もできます。

 

その際、夫婦でのメンテナンスが現状では難しいのであれば、親族以外の友人や知人に広く声をかけ、一定期間、固定資産税分程度の負担で貸し出すことも、意外と現実的なのではないでしょうか。

 

ポイントまとめ
●収益が期待できるような相続物件は少数

●売却の判断を先送りするのも1つのリスク

●民泊での活用は近隣の理解を得ることが前提

●自分たちのセカンドハウスや老後の住まいとしての活用も

 



 

定年退職を迎える60代夫婦のケース
買い替えで新たな暮らしを始めたい

~2020年問題を意識するまでもなく、売れるときに早く売る~

 

子どもは独立したため、現状の持ち家はやや広く、加えて経年劣化からリフォームを加えるべき時期に来ている60代の夫婦を想定します。

 

定年退職を機に、持ち家を売却し、今後の暮らしぶりに合った新たな住まいを購入したいといった希望に対しどのような取り組みが必要が紹介していきます。


 

2階建てで階段の上り下りが辛い、庭の手入れが大変といった悩みから住み替えを検討する相談は、一戸建て住宅の所有者を中心によくあります。

 

この場合、利便性の高いマンションに住み替えるか、バリアフリーの平屋に建て替えるのが具体的な解決策だと思います。

 

住み替える場合、前提となるのは、いまの持ち家が実際に売れるかどうかです。

 

特にバブル期に建てられた郊外の新興住宅では、買い手が付かず売るに売れないケースも増えています。

 

こうした物件は、2020年問題を意識するまでもなく、売れるときに早く売るのがよいと思います。

 

築数十年の一戸建ては更地にしないと売却できないのが一般的です。

 

その取り壊し費用や境界確定の測量には数百万円かかることも多く、買収業者がまとめて面倒を見てくれるのであれば、5年、10年経って売れなくなる前に、早く相談を持ち掛けるのも有効です。

 

ライフデザインと照らし合わせて慎重な判断を
 

仮に納得できる価格で売却できるとしたら、次の住まいの具体的な候補を検討することになります。

 

また、今後のライフデザインについて、ご夫婦で再確認することが大切です。

 

長い老後を意識すると、住宅取得で過剰なコストをかけることは避けたいものです。

 

住むエリアを変えたい場合は、ご夫婦の合意がなければ後々、配偶者から不安や不満が生じがちです。

 

もし、買い替えるほどのコストがかけられないのであれば、地域によっては賃貸住宅も十分な候補になります。

 

もし、希望するような売却が難しければ、現状の住まいをリフォーム、もしくは建て替えることを考えましょう。

 

一戸建てであれば、平屋の省エネ住宅がランニングコストの面でもおすすめだと思います。

 

収入が限られる60代の方の住宅プランは、30代より数倍、慎重に検討する必要あります。

 

ポイントまとめ
●大前提は、持ち家がそもそも売れるかどうか

●売ると決めたら先送りせずにすぐに売却を

●築数十年の一戸建ては、更地にするコストなども考慮

●建て替えなら、平屋の省エネ住宅も選択肢の1つ

 

 

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